夜村


仲間内で噂されていた、新しく開拓する村の件。
他人事のように聞き流していたが、まさか私に白羽の矢が立つとは思ってもいなかった。
このプロジェクトは、世界の未来の命運を担う、大変重大な責務なのだ。こんな重大なことを取りまとめられるのは君にしかいないと思って、ボクは君を推薦させてもらったんだよ。
唾を飛ばしながら熱弁する上司の言葉は、しかし私の心には響かなかった。
この世界に生きている私に、上司の命令に逆らうという選択肢は、ない。
私の担当する村はもう成熟しており、成長の先は見えていた。
毎日も単調なもの。資源集めというよりは練習を兼ねたマルチ、スキルアップのためのフレチャレ、合間に火蓋が切られるクラン対戦。ただただ、それをいつもどおりこなす日々。
周囲からの激励や羨望の声には、また一から村づくりよ、面倒だわ、と肩をすくめてみせていた。
でも、本当は心の奥底に、この退屈な日常が変えられるかもしれないという小さな希望があったのは否定できない。

出発の日がやってきた。
真っ白なタウンホールの前で、皆が私と、やはり同じようにこの任務に選ばれた大工や他の村娘たちを見送ってくれる。
私たちを乗せた船は、ゆらりと岸を離れると、大海原に向けて舵をきる。
どんどん陸地が遠ざかる。皆がいつまでも手を振ってくれていた。妙齢を迎え落ち着いたたたずまいを見せるキングとクイーンの顔が見えなくなると、急にどっと寂しさに襲われた。

「さーて、何から手をつけてやろうかなぁ」
大工が両手をパンパンと叩き、輝きに満ちた目で船の進行方向を見つめている。
どうやら彼は、今回の異動話に真っ先に手を挙げたらしい。物好きな人もいるもんだ、と思った記憶がある。
他の娘たちは、まるで小旅行に来ているのかのように、輪になってきゃっきゃとはしゃぎながらお菓子をつまんでいた。
波は穏やか。水面は太陽の光を反射し、キラキラと輝いていた。


わかってはいたつもりだったが、一から村を開拓する作業は、想像以上にしんどかった。
加えて、元いた世界と違い、急に敵から攻められて資源を盗られることはなかったが、代わりにこっちが上手く攻め込んでも、必ずしも資源が得られるとは限らなかった。
経験してきたからわかっている苦労と、システムが違うことによる想像していなかった徒労。
毎日毎日、くたくたになって眠りについた。

しばらくすると、何度攻めても負けが込んでしまい、村の成長は急速に停滞した。
上司に提出する日報に、「進捗なし」の文字が続く。
週1回、私は報告会議に向かう。そこでただただ叱責されてすごすご夜の村に戻る。そんな割合が増えてきた。
君たちの働きが、我々の村の運命も担っているんだぞ。
あっちの村は新たな開発に着手できているのに、我々は何も進められないではないか。
上司の唾を飛ばしながらのセリフも、一字一句繰り返すことができるようになったくらいだ。

「しょうがないよ、村の成長としては、今はどうしても停滞する時期だ」
「それより、もう少し資源が貯まれば、次は隠しテスラがアップグレードできるぞ~」
夜の村に戻り状況報告を大工にしても、彼は大きな図面を眺めながら、自分の建造物に思いを馳せるばかり。
これまで自分が考えてきた新しい建物を作り出すことに生きがいを見出している彼に、私の心労は理解しえないもののようだった。

「この壁あっちに動かしたいんだけどー」
「いやいや、動かしたらここに穴ができるでしょ」
「この木抜きたいんだけどー」
「資源残量考えたら、ここよりあっちの岩をどかさないと・・・」
「センパーイ、どうしたらいいですかぁ??」
何度教えても見通しを立てることができない村娘たち。私の危機感を共有してもらうのは難しそうだった。


私は、だんだん孤独感を募らせていく。仕事が終わると何も言わず寝床にもぐり、悶々とした思いと戦っていた。
もどかしさに涙が出そうなのを、必死にこらえていた。
キノコ1つ除去するのに大騒ぎの部下たち。
新しい施設を作ることしか頭にない脳筋大工。
村の進捗にしか興味がない上司。
誰も、私のことなんて理解してくれていないのだ。


ある日、とうとう私は我慢ができなくなった。
何があったわけでもない。いつもどおり時間が来たから、ビルダーホールを出て、私たちの村を目の当たりにしただけだ。
でも、私の中で、何かがぷつりと切れてしまった。
くるりと踵を返し、勢いにまかせ、身一つで船に乗りこんだ。










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